石灰」は私たちの生活に無くてはならない「縁の下の力持ち」ですが、あまり知られている事ではありません。主な石灰の使用方法をご紹介しましょう。
鉄を作る時、鉄鉱石・コークスを入れ高炉で熱しますが、そのままでは不純物が多く製品には出来ません。そこで「石灰」の出番です。
石灰を炉の中へ入れると鉄の中の不純物(シリコン・イオウ・リン等)と反応してスラグとなり、取り除かれ、高純度の鉄鋼が作れます。
現在生産されている生石灰の約60%が鉄鋼用に利用され、高品質の鉄を造る大切な脇役として活躍しています。
ドロマイトも鉄を作るのに石灰と同じように使われています。鉄鋼用ではドロマイトの方が高い評価がされています。
道路は私たちの生活に直接関わる、大切な「血管」。移動をする場合は必ず使用する重要なものです。
しかし柔らかく水分を含んだ地面に道路を造る事は出来ないので、それを補強する素材として「生石灰」が使われています。
柔らかい土に生石灰を混ぜ合わせ、ローラーなどで締め固めると、丈夫で強い強固な土に生まれ変わり、建物や道路など重量のある構造物をしっかりと支えることが
できるようになります。
これは生石灰が土の中で消石灰に変わるとき、多量の水を吸収すること、さらに時間がたつと石灰と土とが化学反応によってしっかりと手をつなぎ、硬く 固まるからです。
これを「石灰安定処理」といいます。
石灰安定処理は道路や宅地造成、鉄道、空港、建物の基礎工事、また建設残土の処理や再利用など広い範囲に使われています。
道路にアスファルトを舗装する場合、骨剤(砂利、砂)の他に耐久性を高めるために炭カル(石灰石の微粉末)を混合します。
伝統的な日本家屋の白壁に使う漆喰の原材料も「石灰」です。
大変長い歴史を持つ漆喰は、日本ならではの素晴らしい「エコ」で「健康的」な素材です。
漆喰は、空気中の二酸化炭素を吸収しつづけ永い時間かけて徐々に炭酸化し石灰石に戻ります。
石灰から造られる漆喰は、不燃材で二酸化炭素を吸収し、かび・菌などの発生を予防し、結露を防止するなどすぐれた特性を持っています。
農作物を元気よく、収穫量も多く育てるには土の「酸度」が問題になります。
土が酸性になってしまうのは、人間の活動などで酸性化した雨(酸性雨)や連続的な耕作などにより土が酸性化することが原因といわれています。
土が酸性化すると土に含まれる微量要素やアルミニウムイオンが溶け出すことで植物の根の発達を弱め、栄養が不十分となり生育不良を引き起こしやすくなります。つまり酸性化した土では、 作物の生産量が低下してしまいます。
石灰を使い土を中和し、 根の成長を促すことで作物を大きく育てる事が出来ます。
今普通に呼吸している空気中には多様な化学物質が含まれていて、健康を害したり農作物に悪影響を与えるなど様々な問題があります…。
たとえば、火力発電所や製鉄所等で石油や石炭を燃やすと排ガス中に硫黄酸化物が含まれ、これが様々な問題を起こしています。
そして硫黄酸化物が雨の中に入り「酸性雨」が 降って土中の酸度バランスを崩してしまい、森林を枯らせてしまうという深刻な問題が起きています。
日本の硫黄酸化物を除去する技術(排煙脱硫)は 世界一の水準ですが、その主役 は石灰です。
また、車の排気ガス中の硫黄酸化物は石灰と化合して除去され、副産する石こうはセメントや石こうボード、石こうプラスター等の原料としてリサイクルされています。
私たちの生活に欠かせない大切な水を供給している浄水場では、川や地下水から取り入れた水を浄化するのに石灰は欠かせないものです。
石灰の役目はPH調整・赤水対策・硬水の軟化と、残った汚泥を運びやすくするのに利用されています。
また、家庭などから出る下水にも下水処理場で石灰を使い脱臭・殺菌や、汚泥を集めリサイクルして利用するためにも石灰が使われています。
その他にも、化学工業/海をよみがえらせる/食品/防疫/医療関連などにも使用される、無くてはならない「大切な資源」という事がお分かり頂けたかと思います。